┣香りのイメージング

心に広がる景色を見に行った

ある日のお話。


ホホバオイル少々と
サンダルウッド精油一滴。
お化粧をしない
(ファンデーションを使わない)
私の、
お風呂前の簡単クレンジング。
(オイルクレンジングは時々する)

いくつかの精油を嗅いで
今日はサンダルウッド精油に決めた。

そっと顔に触れ
優しくなでるように指を
滑らせていく。
クレンジングというより
トリートメントね。

目を閉じて
深く息を吸って
香りを吸い込む。
目を閉じたまま
呼吸を重ねる。
香を味わう。



鹿が。
愛くるしい眼をした鹿が、
突然目の前に現れた。
まるでテレビ画面の中央に
ひょっこりと出るように。

そして、
「こんにちは。いってらっしゃい。」
と、鹿が言ったように聞こえた。

私は鹿の眼を見つめ
ゆっくり大きく頷いた。

鹿の後ろに広がる空に視線を向けた。

天井いっぱいに広がる青い空。
青空に雲がいくつも浮かんでいる。
心弾む白い雲。

ゆっくりと空の下に視線を移した。

茶色の土の
ちょっとだけボコボコした道が、
真っすぐ一本道が、
空の下に伸びている。

他の景色は無かった。
音も無かった。

少しの間、
空と道の、
それだけの、
ただそれだけの景色に
見惚れていた。

「おいしい。」

透き通った清浄な空気を
大きく吸い込んで
ゆっくり吐き出して
私はその道を歩き出した。

歩きながら
少し先の方向に目をやると
道の右端から煙が立ち昇っている。
もこもこと白い煙が
立ち昇っている。

煙が出る場所に近づいた。
そこは直径50センチ位の丸い穴で、
その穴から煙が出ていた。

躊躇せずに、穴を覗き込む。

穴の中で
仙人みたいなおじいちゃんが寝ていた。
朗らかで可愛いフェイスの
仙人じいちゃん。

「わしは眠い。眠いんじゃ。」

そのような言葉を
寝たままの仙人じいちゃんから
感じた。

「はいはい。起こしませんよ。」

心の中で呟きながら
静かに道を進んで行った。

するとまた、少し先の道の左端の方から
煙が立ち昇っている。

「今度は、何だろう?」

ワクワクしながら近づいた。

また同じような丸い穴から
煙が出ていた。
もくもくと白い煙が。

私はまた覗き込む。

不思議な煙で、
どんなに顔をうずめても
けむたくない。
むしろ、気持ちいい。

気持ちいい煙の中に
ほわっと紅い輝きが見えた。
少しずつハッキリしてくる。
きらきらと光り輝き、眩しい。

紅い宝石だ。
紅い石のブレスレットが
輝いていた。

色。輝き。美しい。

私はそれを
童心に返ったように
(きっと目を輝かせて)
(口元に笑みを浮かべて)
見ていた。

「すてきだなあ。しあわせだなあ。」

満足そうに微笑んでいた。




ゆっくりと目を開けた。
クレンジングをしながら
サンダルウッドの香りを感じ
心に広がる景色を見に行った。
ほんの少しの時間だった。
奥深き香に導かれて。



私は我が家のDIYに明け暮れていた。
連日、洗面所の床の塗装をしていた。
ペンキ塗りだから、
汚れてもいいかっこ。
髪はお団子。
メイクはしない。


しかし、今日はいつもと違った。
とはいっても、
いつもと同じかっこ。
髪はお団子。メイクなし。

ふと、
頭をよぎった。

昨夜の、
あの、
紅いブレスレットの美しい輝きを、色を、
思い出した。

「そうだそうだ。」と、
ひらめいた。
メイクポーチを開けて
紅い口紅をつけてみた。
ブラシで丁寧に丁寧に。

鏡を見て、
ぷはっと笑った。

「おもしろい顔、私。」

少し不自然だった。

「まあ、いいか。」

そしていつも通りに
せっせと洗面所の床のペンキ塗りに
夢中になった。

三分の二ぐらい塗り終わった所で
ふうっと手を休め
ずっと下を、床を見ていた顔を上げた。

お風呂場の鏡に
自分が映った。

映った自分を見て
ハッとする。
そして、嬉しくなった。

紅い口紅が
可愛かったのだ。
何だか可愛かったのだ。
紅い口紅の私が
可愛かったのだ。


私は微笑んでいた。
ペットボトルの水を飲んで、
ペットボトルの口に付いた紅を見て、
今日も満足そうに微笑んで
ペンキ塗りを再開した。



いつもお読みくださり
ありがとうございます!

今日の言葉

成功とは過程である。

その過程での
姿勢や習慣の成果のことなのである。

コリン・ターナー


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